税理士としての生き様 ~少年の日の思い出


別に彼は「だれかから評価をされたい」とか、「なにかの業績で認められたい」とか、そんな小さなことなど思ってもいません。
それは、私の仲間の1人の税理士のことです。
でも、ちょっと遠くにいる少年だけには、自分のことをよく見ていて欲しいと言いました。
その少年は今、中学1年生です。
3年前、少年が10歳のときに、両親が経営している町工場が倒産しました。
その処理をしたのが税理士の彼でした。

彼から聞いたこの話を、私は一生忘れることはできません。

町工場が倒産すると当然、社長夫婦とも自己破産です。
すると、不安に怯える社長が、毎日のように彼へと電話をかけました。
彼も忙しい中をぬって、2日に1度は顔を出しました。
彼は、完璧にヒーローでした。
無邪気な少年のその目に映った彼は、なんだか困っているお父さんや、うろたえるお母さんを助けてくれるヒーローでした。
悪い奴から守ってくれる仮面ライダーやウルトラマンやマジンガーZと同じだったのです。

彼は「私の世代のヒーローって、今の小学生には分からないよねぇ」と少し照れながら笑いました。
ある日、少年は、顔を見上げると「おじさんって、と~っても強いんだね」と目を輝かせて言いました。
すると彼も「そうさ、おじさんはスッゴク強いのさ」と手を腰に当てると高笑いをしました。

だから、負けられません。
名誉も地位もまったく興味のない彼が、このたった1人の少年のために、絶対に負けられません。 
だって、仮面ライダーがショッカーに負けてしまったら、番組は終わります。
番組の視聴者がたった1人だけでも、約束をしたおじさんは負けられない。

今でも、中学生の少年からは、ときどき電話があるようです。
両親の、その苦しそうな姿を見ていたからこそ、自分も将来は会社を興したいと言っているそうです。
そして、彼に「そのときは手伝って下さい」と。
だから彼は、少年の秘めたる想いを叶えてあげるまで、倒れる訳にはいきません。
私は、税理士としてのあるべき理想の姿を彼の生き様に見た気がしました。
そして私も、と~っても強いんです。